選択的夫婦別姓についての議論がこれまでになく高まっています。
2000年の総選挙で初当選した山花郁夫衆議院議員は、初めて提出した議員立法が選択的夫婦別姓を可能とする民法の改正案だったといいます。人権、多様性という観点からも、選択的夫婦別姓制度の導入を訴え続けている山花郁夫衆議院議員に聞きました。
―― 日本では結婚すると姓を改めることになっています。世界的にはどのようになっているのでしょうか。
民法750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定められています。結婚するためには、どちらかが姓を改めて、夫婦が同姓となることが義務づけられています。このように、夫婦同姓が強制されているのは世界でも日本だけだといわれています。
―― 夫婦同姓を強制することについては、憲法違反ではないかとの意見もあります。憲法違反であるという主張の根拠は何ですか。
個人の尊厳や幸福追求権を規定する憲法13条に反するのではないか、実際意に改姓しているのは圧倒的に女性であり、法の下の平等を定める憲法14条に反するのではないか、婚姻及び家族に関する平等を定める憲法24条に反するのではないか、などです。
昭和28年に刊行された注釈書でも、「……配偶者が同一の氏を称しなければならないとして、その一方の氏の放棄を強制しているのは(民法750条)、単なる方式以上の実質的な制限を定めるもので行過ぎではあるまいか」(法学協会『註解日本国憲法上巻⑵』(有斐閣)474頁)と指摘されていて、かなり古くから疑義が呈されています。
―― 実際の裁判では、最高裁はどのような判断をしたのですか。
最高裁の多数意見は、夫婦同姓制度には一定の意義があるとして、憲法違反とはいえないとしました(最大判平成27・12・16)。ただ、憲法違反であるとする5名の裁判官の反対意見がつけられています。また、寺田逸郎裁判官は補足意見で、「国民的議論、すなわち民主主義的なプロセスに委ねることによって合理的な仕組みの在り方を幅広く検討して決めるようにすることこそ、事の性格にふさわしい解決であるように思える」と述べています。
―― 法改正によって対応すべきと言っているようにも聞こえますね。
私が2000年の総選挙で初当選して、最初に提出した議員立法が選択的夫婦別姓を可能とする民法の一部を改正する法律案でした。その後も累次にわたって提出していますが、いまだに実質審議すらされていません。
――「選択的」とはどういうことですか?
「夫婦同姓を選択したい」ということであれば、それも可能ですし、結婚してもそれぞれ今まで通りの姓を使用したいということであれば、それも認める、つまり、同姓か別姓かは個人の判断で選択できるように改めるというものです。
―― 別姓を強制する、ということであれば反発もあるかもしれませんが、選択できるだけなら反対する理由はないように思えますけど?
夫婦同姓が日本の伝統で、それを維持すべきだという人もいますが、そもそも庶民が名字を名乗ることが許されたのは明治維新以降ですし、北条政子や日野富子が源や足利を名乗っていない例もありますし、同姓が古(いにしえ)からの伝統だというのは違うのではないかと思います。
―― 通称使用で良いのではないかという意見もあります。
通称というのは日本の文化で、外国の人にはわかりにくいもので、外国に出張したり旅行に行ったりした際に不審者扱いされる可能性があります。
―― 夫婦同姓であることの問題点は何でしょうか?
自分の姓名は生まれてからずっと個人の呼称だったわけですから、これを婚姻を機に改めなければならないということでアイデンティティーを喪失したと感じることもいます。また、改姓してしまうと、国際的な特許をはじめ、論文にどの検索でヒットしないなどの実害が生じます。
憲法24条2項は「婚姻……に関する……事項に関しては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」としています。この観点からは、選択的夫婦別姓に改めることが必要と考えます。
―― 今でも裁判で争う人が続いています。裁判で勝てる可能性はあるのでしょうか。
最高裁では反対意見が5人という結果でした。NHK連続テレビ小説「虎に翼」でも、後に違憲判決が出される尊属殺人罪(旧刑法200条)について、当初は合憲判決が出たことが描かれていました。少数意見でも、おかしいと思って声をあげたことは残ること、そして、その声はいつか誰かの力になるという趣旨の台詞がありました。将来的には違憲だという裁判官が多数になる可能性はあると思います。
ただ、裁判で争うことも1つの方法ですが、やはり、民主政のプロセスに従って、立法的解決をするのが政治の役割だと思います。
選択的夫婦別姓について。 | 衆議院議員 山花郁夫 | やまはないくお 立憲民主党 東京22区