「憲法に関する当面の考え方」改定にあたって
通常国会の終わりには立憲民主党の憲法調査会で従来ですと「憲法に関する当面の考え方」と呼んでいた成果文書について改定を行いました。
国会の中でずっと党の方で議論してきたことであるとか、昨年末にまとめたときからアップデートしなければいけない事柄も出てきましたので、それについてまとめたものです。
基本姿勢のところを噛み砕いて申し上げますと、いわゆる護憲派というと憲法について一字一句変えさせないとか、そもそも議論するのが改憲の入口だ、みたいなイメージがあった気がしますし、また改憲派というと自民党の改憲草案に見られるように国民の権利を少し制限したりとか、義務を強調するだとか、あるいは権力行使をやりやすくするみたいな、こういった考え方もあるような気がします。
ただ、我々としては両極ではなくて例えば国民の権利をもっと確保できるだとか、あるいは権力行使をもっと縛ることができるようなカタチでの憲法上の議論はちゃんとやっていきましょうということで、これを我々は立憲的憲法論議と言っています。
例えば70年も経ったから変えたほうがいいんじゃないの?みたいな地に足のついてない話ではなくて、法律でもそうだと思いますけど、必要性があって、キッカケがあって変えるべきじゃないか、という議論がないと説得力がないんじゃないでしょうか。
例えば道路交通法を変えましょうといった時に役所の中で議論してるってことじゃなくて、かつて酒気帯び運転はそんなに厳しくなかったですけど、小さいお子さんの命が失われることがあって、法改正によって厳罰化されてきました。
憲法でも条文にないことによって不都合があるんじゃないか、政策を遂行しようとしたときに引っかかるところがないか、具体的にはLGBTの方々の人権であるとか、特に同性同士の婚姻について憲法の規定が引っかかるかなというところがありましたので、そういったことについて検討を行いました。
ほかにも臨時国会の要求について期限がないからいつまでも開かれないですとか、衆議院の解散についてあまりにも自由にできてしまうですとか、先の国会でも証人喚問をやるかやらないかで随分揉めてましたけど、国政調査権についても多数決じゃなきゃできないとか、こういった在り方が本当に良いのかということこそが、今の規定のもとで議論すべきことなんじゃないかと思います。
法律でもそうですけど、我が党が、我が党がじゃなく、やっぱり憲法ですから我々は問題提起はしますけど、国民が権力者の権力行使を縛るのが憲法ですから、そういった問題提起を受けて多くの方々から意見が出てきて、それを国会が受け止める姿が本来の在り方ではないかと思っています。
https://archive2017.cdp-japan.jp/policy/constitution山花 郁夫さんの投稿 2018年8月15日水曜日
立憲民主党は、結党以来、憲法に関する議論を積み重ねてきました。
憲法に関しては、いわゆる「護憲派」か「改憲派」か、というような色分けがされ、そのスタンス自体に対してお互いが批判をする、という風潮が見受けられます。もちろん、「憲法論議は大いにやりましょう」という「護憲派」もあれば、穏健な「改憲派」も存在するはずです。
にもかかわらず、現行憲法を一字一句変えるべきでない、議論をすることそのものを改憲への入り口として拒否するのがいわゆる「護憲派」であり、タカ派的な主張をするのがいわゆる「改憲派」であるというイメージが一般的なのではないでしょうか。
権力行使を容易にし、国民の義務規定の創設や、国民の権利を制限する方向の憲法改正を主張する、いわゆる「改憲派」の中には、①戦後、憲法は一度も改正されていないのだから、時代に合わせる必要がある、とか、②学説と憲法の文言に乖離があるから合わせる必要がある、という論調のものも見受けられます。
しかし、憲法を改めようとするのであれば、思想的な、あるいは観念的・抽象的な議論ではなく、①「憲法の規定が原因」で、政策遂行に支障が生じる事実があるのだろうか、あるいは②「憲法に規定がない」ことによって何らかの不都合が生じる事実があるのかということが検証されるべきです。
つまり、憲法の文言を改めようとするのであれば、その必要性および合理性について、具体的な事実に基づいて検討されることが必要不可欠なはずです。このような検討を経たうえで、権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与するとの観点から、憲法や関連法の論議・検討を進めてきました。「国家権力の正当性の根拠は憲法にあり、あらゆる国家権力は憲法によって制約、拘束される。」という立憲主義をまもり、回復させることが目的です。
私たち立憲民主党は、いわゆる護憲と改憲の二元論とは異なる、「立憲的憲法論議」をこれからも深化させます。
これまで検討してきたテーマの中には、①憲法に問題があるというよりは、憲法の価値をより具体化するために法律のいっそうの整備が必要と考えられるもの、あるいは②同性婚のように、当事者の求めに応じた法整備を行おうとしているにもかかわらず、憲法の規定がハードルになっていないかについて一定の検討を要するものもありました。それぞれについて、一定の方向性を示しています。
それだけにとどまらず、③憲法の規定によって、あるいは規定がないことによって、具体的な不都合が生じているのではないかと考えられる課題についても率直に提起しています。
ただ、留意しなければならないのは、普通の法律がいわば権力者が国民の権利・自由を縛るものであるのに対して、憲法は国民が権力者の権力行使を縛るものだということです。もし、憲法を改めようというのであれば、政党が「条文案」を示して政党間でその優劣を競うのではなく、国民的な議論を経て、主権者の声に応える形で各党各会派が成案を得るように努めるのが本来あるべき姿ではないでしょうか。
今回、いくつかのテーマについて、かなり踏み込んだ形で問題提起をしています。私たちの提起を素材にして、地に足のついた憲法論議が広まることを期待します。
山花 郁夫
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憲法に関する考え方 – 立憲民主党
https://archive2017.cdp-japan.jp/policy/constitution
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