人権、格差、多様性を軽んずる政治が長く続き、不公正な社会のひずみが噴出しています。「社会的に弱い立場にある人に光をあてるのが政治の役割」「差別や分断を許さない社会を目指すことは、すべての人の安心につながる」と、格差是正や個人の人権の尊重を訴え続ける、山花郁夫前衆議院議員に山積する課題について聞きました。

手を差しのべるべき人々のための政治にしなければ

―― 政治とカネの問題により、政治不信が高まっています。

裏金問題は違法性の問題だけでなく、特定の人びとの方を向いた偏った政治が行われ、政策決定の過程を歪めたのではないかとの疑念も生じさせます。そもそも、本当に政治の力を必要としているのは、多額の献金やパーティー券の購入などできない人びとではないでしょうか。手を差しのべるべき人びとのための政治になっていないことが問題です。

―― 歴史的な賃上げが報じられていますが、この傾向は続くと期待していいのでしょうか。

政治の役割は、経済団体に「よろしくね」と要請することではなく、税制などの工夫で賃上げをしやすい環境を作ることです。法人税は、累進税率ではなく、一律の税率になっています。累進制がとられていた時代、「これ以上収益を上げても高い税率がかかる」と考えた経営者は、賃金や賞与で社員に還元しようとしました。税制が賃上げのインセンティブになり得るのです。一律の法人税を是正し、大企業の内部留保が蓄積されていく構造を改善することで、働く者が報われる社会にしていかなければなりません。

平均的な豊かさを享受できる社会を

―― ジニ係数(所得格差を示す指標)が拡大しています。格差是正の処方箋は?

これまで、高額所得者を優遇し、高額所得者がお金を使えば、経済が回るというモデルで政策が遂行されてきました。しかし、1億円稼いでいた人が2億円、3億円稼いでも、投資に回り、地域経済に貢献するわけではありません。昨年よりも月例賃金が高くなった、実質賃金が上がったという人がたくさんいた方が、地域経済は活性化します。年間所得が1億円を超えると実質的な税負担率が下がる「一億円の壁」の原因である金融分離課税の問題などにメスを入れ、一握りの人が富を独占するのではなく、多くの人が平均的な豊かさを享受できる社会をめざします。

すべての国民は健康で文化的な生活を有する権利がある(憲法25条)

―― 憲法の専門家でもありますが、憲法的観点から政治の果たすべき役割とは。

憲法は、私たちの尊厳と権利を守るためにあります。この社会に生きる一人一人にその権利を確保できているのか、と問わずにはいられません。経済的な格差を是正することは、25条(生存権の保障)と14条(法の下の平等)を実質化するものです。13条では、個人の尊重を謳っています。障がい者や性的マイノリティなど、社会的少数者に生きる勇気を届けることは政治の大きな役割です。憲法に書かれた文字を現実のものにするための政策を追求します。

―― 「マイノリティーに優しい社会は、すべての人に優しい社会に通じる」と、障がい者施策の立案等にも注力されてきました。

歩行が不自由な人への配慮から設置された駅などのエレベーターが誰にとっても便利なように、マイノリティー(社会的少数者)への配慮からはじまった取組みが、みんなの暮らしを豊かにしている事例はたくさんあります。マイノリティーの人権を保障することは、社会全体の幸せを高めることにつながります。2025年、東京で、ろう者による国際スポーツ大会「デフリンピック」が開催され、調布市の武蔵野の森総合スポーツプラザも競技会場になります。聴覚障がい者への理解や多様性に関する認識が深まる機会になることを望んでいます。

―― 今こそ、まっとうな政治が求められているのでは。

権力者による恣意的な権力行使を制限し、国民の権利を守る立憲主義に基づいた公正・公平な政治が「まっとうな政治」です。法の支配が貫徹され、公正なボトムアップの政策決定がなされ、多くの人びとが幸福を分かち合える政治、あなたがあなたらしく生きられる社会を皆さんとともに創ります。