「逐条憲法精義」美濃部達吉(著)


 
天皇機関説事件というのをご存知でしょうか?

美濃部達吉という方が唱えた説で、天皇は国家機関の一つであるという今で言えばごく普通の当たり前の考え方だと思いますけれども、戦前は何か絶対君主のような解釈をされていたりとか、あるいは神のような存在であるとされていましたので、国会であるとか内閣であるとか裁判所と同じ一つの機関だ、というようなそんな解釈をするとはけしからんということで、弾圧をされたそんな事件が天皇機関説事件というのです。

これは学生時代に古本屋さんで手に入れた美濃部達吉著「逐条憲法精義」という、後ほど発禁処分になってしまう本なんですけれども、いま見てもですね結構興味深いことが書かれています。

前書き的なところですけれども、序、序破急の序のところに、著者の見るところによれば従来日本で行われている憲法学説の甚だ満足し難いものが多いのは、次の三つであるということを言っています。

そのうちの一つがいわゆる従来の国体、国の体制ですね、

わが国体を以て長大無限の権力が君主に存することを主義とするものと解するならば誤りこれよりも甚だしきはない。

というところから始まります。

それが一つ目だということ、その二つ目というところが非常に示唆に富んでるんですけれども、

立憲政治の精神についての理解の足らぬことである。立憲政治を以て三権分立の政治であるとすることは、かつて18世紀末に行われた思想であるが、わが憲法の解釈において今も尚此の如き思想を以て基礎となし、立憲政治が主として民衆的政治であり、責任政治であり、法治政治であることの本質を否定する説が、広く行われている。

非常に憤っております。

今の政治状況に対しても極めて示唆的な感じがいたします。

(2018年8月撮影)