再び権力分立について考える
~今度は予備費10兆円問題に関連して~

はじめに

これも小学生のころからの刷り込みなのかもしれません。国会は法律を作るところだ、という話です。
現に、日本国憲法にも、国会は「国の唯一の立法機関」と規定されています。法律を作るところであることは間違いではないのですが、期待される役割はそれに尽きるのか、という問題です。

議会に何が求められたのか

世界史で、議会の役割に立法権をよこせという革命や闘争を学んだ記憶がありません。おそらく多くの皆さんも同様ではないでしょうか。
民主主義のモデルとされるイギリスでは、古くはマグナ・カルタや1628年の権利請願において課税に対する同意が主張され、名誉革命の後の1689年の権利章典では、国費の支出に対するコントロールもまた議会の重要な任務とされました。アメリカの独立運動は植民地への同意なき課税への抵抗に始まったものですし(「代表なければ課税なし」)、フランス革命も国王の新課税政策がその端緒でした。
つまり、歴史的には議会に期待された役割は、国の財政に対する統制だったのです。
このように、国の財政に関する重要な事項について、国民代表機関たる議会が関与し、これに統制を加えなければならないという原則を「財政立憲主義」「財政民主主義」と呼びます。

10兆円問題

政府が閣議決定した第2次補正予算案総額約32兆円の3分の1近く、10兆円という巨額の予備費が計上されています。

予備費というのは、「予見し難い予算の不足に充てるため」(憲法87条)に設けられるもので、100兆円規模の年度当初の予算でも5千億円から1兆円程度が相場です。毎年、災害対策の予算はつけていますが、たとえば国会閉会中、前例のないような大災害が起きたにもかかわらず、「予算がないから迅速な対応ができない」ということがないように、という趣旨です。
 
これほどの大規模な支出が必要なら、①会期延長して3次補正を組むが、②予算を組んだうえで臨時国会を開くというのがスジです。「持続化給付金」や「Go To キャンペーン」でいわば中抜きともいえる不相応な委託費が明らかになっています。国会を開いていると、追及を受けるので、国会閉会後に白紙委任をせよと言っているようなもので、財政立憲主義の精神にもとるものと言わなければなりません。