戦後80年・憲法と平和【下】憲法9条と13条が示すもの ― 憲法は国の設計図
明治憲法の時代には「臣民の権利および義務」という規定のされ方をしていました。
個人というか、臣民も国家のために奉仕をすべきだという考え方でした。
戦争の時も国のために、命を捨てるべきだという考え方だったのだと思います。
日本国憲法の下では、すべて国民は個人として尊重される(13条)。
つまり、個人のために、国家があるのだ。こういう考え方に変わってきましたので、そういう意味でも、憲法9条で戦争を放棄していますけれども、国のために命を捨てるみたいなことはすべきでないというふうに考え方が変わったのだと理解することができると思います。
清宮四郎先生という大変高名な憲法学者が、著書『憲法要論』でこんなことを書いています。
「憲法は、国の仕組みと政治のあり方についての基本を定める法である。国を建物にたとえれば、憲法はその設計図、青写真である。そうして、憲法に画かれた図面にもとづいて実際に国を建てるものは、公務員であり、また、一般国民である。これらの者が憲法を心得ていないと、思いもよらない国が出来てしまうおそれがある。」
日本国憲法の核心はあくまでも個人を尊重することにあるということについてお話ししました。
憲法の議論についてはいろいろあってもいいと思いますが、あくまでも個人の尊重ということを中心に議論されるべきだと思います。
おかしな設計図が描かれると大変なことになるということを、この本『憲法要論』は示唆しています。