被害者の心情と立法事実のはざまで(改めて考えられる方策について)

過失運転致死傷罪の検討の際、もし、「業務以上過失致死傷罪」を重く処罰するという方策によった場合、処罰が拡張される可能性のある人=当事者の意見を聴くことは困難ですから、合理的意思を勘案して処罰の外に置くべき旨は「当事者について」で述べた通りです。

この場合、処罰が拡張される可能性のある人は、運転免許証を持っている人ということになりますが、性交同意年齢の場合、(仮に16歳とした場合)14歳、15歳のすべての人が当事者となりうることになります。したがって、同様に、合理的意思を勘案すべき場合と考えます。

ここからが問題です。

一方で、「それでも犯罪化し、処罰すべきだ」とすれば、性交同意年齢を引き上げる、というのが1つの方策といえましょう。

他方、「15歳の母」は保護すべき対象であって、処罰の対象から外すのが「当事者」の合理的意思ではないかと考えられるところ、そうだとすると、この問題は性交同意年齢の問題ではなく、保護年齢の問題のはずです。その上で、①児童福祉法の規定をより詳細な形で規定しなおす、②監護者に見られるように、児童福祉法で規定されているものについて、刑法に移行させることが適当と認められる類型があるのであれば(刑の重さなど、なお検討すべき点はありますが)、児童福祉法から刑法に規定しなおす、というのが1つの考え方であることは、すでに性犯罪に関する刑法改正についてのノートで提案したところです。

この点、2020年に成文堂から出版された、樋口亮介・深町晋也編著『性犯罪規定の比較法研究』の中で、仲道祐樹・早稲田大学社会科学総合学院教授が、イギリス法の分析から、「例えば、14歳、15歳といった年齢層の者に、〈判断能力の未熟さゆえに欺罔的手段により性交に応じさせられやすい〉という脆弱性が認められるとする。このような脆弱部分に対応する保護を与えることを目的とすれば、単純な年齢下限の引上げ以外にも、『16歳未満の者に対し、これを欺いて同意させ、性交等をした者は、第177条の例による』といった形の、脆弱性への攻撃に着目した刑事規制も選択肢となることになる。

これにより、〈13歳未満か16歳未満か〉という二者択一的な年齢引上げから一歩踏み出し、被害者の要保護性と性的自律過程の保護のバランスを図りつつ、脆弱性を直接ターゲットとする当罰性のある行為を捕捉する立法が可能となる。例えば、13歳未満はあらゆる性交等から保護し、16歳未満は暴行・脅迫・監護関係・欺罔を用いた性交から保護し、18歳未満は暴行・脅迫・監護関係を用いた性交等から保護し、18歳以上は暴行・脅迫を用いた性交等から保護するという、成長に伴う脆弱性の解消程度に応じた段階的な規制が考えられる。」

という異なる方策が提案されていることも参考にすべきと考えます(同書82頁)。