新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案について。
懸念していた刑事罰が、野党側の要求により削除されることが合意され、今日から衆議院で審議入りすることとなりました。
「悪いことをしたのだから刑事罰」という素朴な感覚を持たれている方もいるかもしれません。
しかし、刑事罰は法的制裁のうちでも最も激烈なものです。政策として選択するのがベストかどうかは、よくよく考えなければいけないはずです。
交通事故を減らすためには、過失致死傷罪を重罰化することよりも、歩道にガードレールや路地にミラーを設置することのほうが有効な場合も少なくありません。感染拡大防止のためには、入院先から逃げ出すような者がいたとして、感染症法19条により入院措置をすることのほうが適切だと考えます(逮捕されると思えば、逃亡・潜伏による感染拡大リスクがないでしょうか)。
厚労省のホームページに1月15日開催の「厚生科学審議会感染症部会」議事録が掲載されています。ほとんどの専門委員が刑事罰導入に反対ないしは慎重意見でした。
立命館大学の末川博名誉総長は、権力に対しては懐疑的であっても、権威に対しては敬意を払うように、という趣旨のことを語っていました。菅内閣が、学術会議問題に続き、専門家の意見に対して経緯を払っていない例だと思います。