臨時国会の召集要求と憲法53条の規定について。
以前、臨時国会の召集要求のことについてお話をしました。
他の教科書にはこう書いてありますよ、という話をしましたけれども、今日は現物をいくつか揃えてみました。まずは清宮四郎先生の「憲法」という教科書には
……内閣から発案する議案の準備が間に合わないとか、緊急の必要性を認めないとか、内閣側の都合や主観的判断によって、召集を遅らせることも許されない。
引用:清宮四郎著「憲法〔第3版〕」229頁(有斐閣)
ということが明確に書かれています。
伊藤正己先生は後に最高裁の裁判官になった方ですけども、こちらも
……緊急の必要性がないとか、内閣側の準備が整わないなど不都合があるという理由で召集をおくらせることは許されない
引用:伊藤正己著『憲法〔第3版〕』452頁
と書いてあります。
まさに今の状況について語られているような感じがいたします。
また宮沢俊義先生が書かれ、芦部信喜先生が補訂されたコンメンタール、注釈書ですけれども、こちらの方には期間については
内閣としては、……相当な期間(せいぜい2,3週間でよかろう)のうちに臨時会の召集を決定すべきものである
引用:宮沢俊義著・芦部信義補訂「全訂日本国憲法」400頁(日本評論社)
ということが書かれております。
ちょっとユニークなので紹介したいのが、「註解日本国憲法」という、これは戦後すぐに法学協会というところが作った注釈書なんですけれどもこちらにも
この要求があると、内閣は必ず召集の決定をしなければならない拘束をうける。法定の要件がみたされている以上、政治上の不適当その他を理由としてこれを拒むことはできない。
……召集決定要求が、実は、充分の根拠を欠く政府に対する単なるいやがらせであったとしても、それによって、国会が国民により十分に批判されれば足りるのであって、内閣が事前に、自己の判断で、召集を拒否しうべきものではない。引用:法学協会編「註解日本国憲法下巻」829頁(有斐閣)
ということが書かれています。
今回はそのことと合わせて、クリーンハンズの原則ということについて述べたいと思います。
これはイギリスの法律のことわざに由来します。
裁判所に申し立てをする時には、その人はクリーンな手でなければいけない、綺麗な手でなければいけないという原則です。
翻訳すると申し立てをするについては法を遵守していなければいけない、ということになるのではないでしょうか。
裁判所に道徳的色彩の強い救済を求める場合においては,自分にうしろ暗いところ(良心や信義則,または公序良俗に反する行為)があってはならないという意味。英国のエクイティの法諺(ほうげん)に由来する。日本の民法の不法原因給付はこれに当たる。たとえば,賭博(とばく)に負けた者が給付した金銭の返還を請求できないという場合など。
まさに憲法を改正ということを唱導するのであれば、憲法53条の規定をまずは守っていただきたいと思います。